東大セミナー通信

2016.02.01塾長メッセージ

記憶にのこるのは印象


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近ごろ講演の機会をいただくことが増えた。以前に紹介した小中学校のPTA役員と教員の会はもとより出身高校の同窓会総会、金融機関、何よりロータリークラブの卓話などである。ロータリークラブは富山県・石川県の65クラブにおよび昨年の7月から10月にかけて集中的に行った。どれも30分から1時間程度の短いものであるが、これまでの人生で感じたこと、仕事を通して経験したことなどを中心に話をした。5年ほど前までは教室で生徒の社会科を教えていたので話すことに慣れてはいたが、対象はどれも経験豊かな社会人であり、緊張の面持ちで多少硬くなっていたに違いない。しかし、不思議なもので場数を踏むほどに慣れてきて過度の緊張も和らぎ、それまで超過気味であった時間も時計を見なくても収まるようになってきた。

 

そこで気づいたことが一つある。スピーチが終わると、多くの人から労いやら内容についての簡単な評価をいただいたのであるが、私に対するある共通の言葉があった。何人の人からその同じ言葉を聞いただろうか。10人や20人ではないのである。それは私という個人に対してなのか、話の内容なのかはわからなかったのであるが、とにかく「熱いですねぇ〜」という言葉で形容されたのである。講演者としては話の内容についての具体的なコメントが欲しかったが、あまり聴けなかった。幸いにもそのつど褒めてくださる方がいた。しかし本人のところにわざわざ歩み寄って悪くいう人もあまりいないだろう。初めはこの「熱い」ということについて気に留めていなかったのであるが、いく度となく言われると流石に意識するようになった。

 

私は講演を聴くのが好きである。昨年は三浦雄一郎、五木寛之、鬼丸昌也の各氏の講演を聴く機会に恵まれた。どれも今でも記憶にのこる素晴らしい講演であった。しかしその内容をいつまで鮮明に覚えているだろうか。心もとない限りである。講演者その人から受ける印象がつよく、話の中身は時が経てば記憶から消え去る。三浦氏は80歳でエベレスト登頂を目指してストイックに身体を鍛え自己管理に努める超人のイメージがのこる。五木氏は、やはり80歳を過ぎても飄然として人生の機微を語られどこか哀愁をおびていた。鬼丸氏はプレゼンが上手い若く情熱的な国際ボランティア活動家である。何年経ってもこの印象は私の記憶から消えることはないだろう。自分はどういう人間としてのイメージをもたれているか考えてみるのも一興である。

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