「マウンティング」って何だろう?心理学的な視点から解き明かそう! - 石川県金沢市・野々市市・白山市の学習塾 - 東大セミナー
2023.10.12教育情報

「マウンティング」って何だろう?心理学的な視点から解き明かそう!


こんにちは、皆さん。東大セミナーの篠原です。

最近、ある現象について考えてみたことはありますか?

それは、相手を負かそうとする行動、通称「マウンティング」についてです。

最近は小学生の間でも「はい、論破!」「それってあなたの感想ですよね」などの言葉が流行し、多くの大人たちを困惑させました。

子供たちは大人の行動を観察して学ぶもの。したがって、大人同士のコミュニケーションにおいても、この「マウンティング」について考えてみるべき時が来ているのかもしれません。

今回のブログでは、「マウンティング」とは何か、それに対処する方法やその背後にある原因について深堀りしていきます。

 


1.そもそも「マウンティング」とは?

2.女性の方がマウントに敏感と言われる

3.女性同士のマウンティング3分類

4.なぜ人はマウントを感じるのか? 自己肯定感と自己呈示の役割

5.自分のコンプレックスが嫌な気持ちの原因となることもある

6. 最後に


 

 

 

1.そもそも「マウンティング」とは?


「マウンティング」とは、元々動物が優位性を示すために使う行動ですが、最近では人々が相手に対して自分の優越性を示す言葉や態度を用いる行動として使われています。例えば、以下のような事例が考えられます。

 

「えー !? でも私はユカリみたいに奥ゆかしいかんじにあこがれてるよ〜。ユカリの “ 一人じゃ何もできない ” って雰囲気、イイよね〜。男の人がなんでもしてくれそう〜。何でも自分でやっちゃう私のムダな行動力とかホントいらないし〜」(瀧波ユカリ・犬山紙子『女は笑顔で殴りあう : マウンティング女子の実態』)

 

これらの発言は褒め言葉に見えますが、実際には相手の不足を暗に指摘する要素を含んでいます。同様のパターンの事例が他にも存在します。

 

 

 

2.女性の方がマウントに敏感と言われる


女性は一般的にマウンティングに対してより敏感とされています。

大学生を対象に行われたマウンティングに関する調査では、男性と女性のマウンティングに対するストレス反応が比較されました。

その結果、女性は男性に比べてマウンティングによりストレスを感じやすいという傾向が見られました。

この違いの理由は、女性の方が他者に対して共感性が高く、他者の行動や言葉により影響を受けやすいためと言えるでしょう。

たとえば、家庭内の関係においても「嫁姑問題」という言葉が存在するように、女性は人間関係に敏感であることが一因とされています。

また、女性はファッションやメイクなど外見に敏感な嗜好を持つことが多いため、容姿に関するマウンティングにも影響されやすいと考えられます。

女性がマウンティングに対してより敏感である理由は、さまざまな人間関係に積極的に関与し、外見に敏感であることから生じている可能性があります。

 

 

 

3.女性同士のマウンティング3分類


女性同士のマウンティングは、大きく以下の3つに分類されます。

 

1.伝統的な女性の地位・能力の誇示:

伝統的な女性の価値観に焦点を当て、貞淑さや既婚の安定、夫・彼氏の存在などをアピールします。

  • (例)
  • 産後すぐに仕事復帰する女性に「子どもが3歳まではそばにいた方がいい」
  • 「イヤになったらいつでも仕事やめていい、と彼氏が言ってくれる」と誇る

 

 

2.自立した人間としての地位・能力の誇示:

自分の職業や学歴、仕事の有能さ、苦労、経済力など、自分の独立した地位や能力をアピールします。

  • (例)
  • 主婦に対し「主婦なんて中卒でもなれる」と言う
  • 子どものお迎えを親に頼むと「やっぱり実家近いの超得だよね~」と言う

 

 

3.女性としての性的魅力の誇示:

美しさ、ファッションセンス、若さ、モテ経験、男のセンスなど、性的魅力に焦点を当てます。

  • (例)
  • 「素材はいいのにもったいない!」とメイクや服装に口を出す
  • アラサー女性に「30過ぎての婚活はイタい」と言う

 

 

これらの競争は、「三すくみの状態」とも呼ばれ、女性同士がお互いに競い合っています。この状態は、一方面で成功すると他方が犠牲になることを意味し、男性と比較すると、女性は異なるカテゴリー間での競争を行うことが一般的です。

 

 

 

4.なぜ人はマウントを感じるのか? 自己肯定感と自己呈示の役割


同じ会話に立ち会っても、人によっては「マウントを取られた」と感じる人もいれば、そうではない人もいます。これは、受け取る側の解釈に依存する現象であり、人によって異なります。では、なぜ受け取り方に差が生じるのでしょうか?「あいつにマウントを取られた!」と頻繁に感じるよりも、マウントのような発言を無視できる方が、より幸福な生活を楽しめるでしょう。

これについて、自己肯定感が高い人は、マウントの影響を受けにくいとされています。また、心理学において「自己呈示」という概念があります。自己呈示は、理想的な自己像や特定の目的に合致するために、他人に見せたい自己像を表現することを指します。たとえば、面接や採用試験で「本当の自分を見せてください」と言われても、候補者は本当の自分ではなく、求められる自己像を提示します。自己呈示の一形態として、「自己高揚的提示」という概念も存在します。これは、自分自身の価値を高めるために他人にアピールすることを指します。たとえば、知らない本や音楽に詳しいふりをする、経済的に余裕がないのに奢りを振る舞うなどがこれに該当します。

研究によれば、他人の「自己高揚的提示」を批判的に分析する傾向がある人ほど、同時に感情的に影響を受ける可能性が高まることが指摘されています。自己を良く見せることに否定的な感情を抱く人ほど、他人の「自己高揚的提示」を受け入れることが難しく、感情的に影響を受けやすくなります。また、他人が自己を良く見せようとする行動を不快に感じるほど、自身が他人に対して同様の行動を取ることに不快に感じる可能性があります。したがって、マウンティングに対する感受性は、これらの要因に影響される可能性があるでしょう。

 

 

 

5.自分のコンプレックスが嫌な気持ちの原因となることもある


朝日新聞の”「マウントをとられる」となぜ嫌か 受け手の心に潜むコンプレックス”によると、「あの人は自分を上回っている」と感じる嫌な気持ちの原因は、自己のコンプレックスに起因することがあるとのことです。記事には、以下の具体的な会話が載せられています。

 

 たとえば、役員みんなで飲み会をしようという話になったときにも、そのママ友は開口一番にこう言います。

 ママ友「えー、その日、行けるかな。主人に聞いてみないとわからないなあ。」

 この言葉を聞くと、アカネさんはこう思うのです。

 アカネ「はいはい、あなたはご主人に愛されているんでしょうね。いちいち外出で許可がいるってどういうことよ。」

 

上記のような会話には、わずかながらマウンティングの要素を感じるかもしれません。しかし、この発言をマウンティングと受け止める背後には、「自分の夫はどこで何をしているかについて興味がない」といった不満が潜んでいる可能性があります。自分が愛されている実感が欠如している状況で、他の人が愛されているように見えることが、マウンティングに反応する理由となるかもしれません。もし、自分が夫から愛されていると感じているなら、同じ発言に対して不快な気持ちが起こりにくいでしょう。そのため、「他人にマウンティングされた」と感じた際には、一歩引いて考え、自分のコンプレックスが刺激されたことを認識しましょう。「相手がうらやましいなら、自分の理想に近づける方法は何か」「今できることは何か」と考えることが有効です。マウンティングに対するイライラが湧いてきたら、コンプレックスと向き合うことが難しいこともあるでしょう。その際には、ストレスを感じるコミュニティから距離を置いたり、他人との比較を避けることを検討することも良いでしょう。

このように、他人との比較からくる嫌な気持ちには向き合い、建設的なアプローチをとることで、自己成長やストレスの軽減につながるかもしれません。

 

 

 

6. 締めくくり


今回は、話題の「マウンティングの原因や対処法」についてお話ししました。この「マウンティング」という言葉は比較的新しいものであり、研究がまだ限られているようです。子供の「論破!」というようなオーバーなマウンティングははっきりと目立ちますが、大人の場合、マウンティングはより微妙で複雑なものと言えるでしょう。さらに、他者に感じる不快感が、自己の内面の問題を反映しているというアイデアは非常に興味深いものです。

「あいつにまたマウント取られた!」と感じたときは、自己認識の機会かもしれません。心理学の研究から分かるところによれば、他人に受け入れられる経験は、自己のコンプレックスを改善するのに役立つことがあります。私たちも、皆さまが温かく受け入れられるコミュニティの一部となりたいと思います。

 

 

 

(参考)

市川 真未「マウンティングの特徴について―ポライトネスの原理から― 」

 森 裕子,石丸 径一郎「マウンティングエピソードの収集とその分類」

幸山 知聖,原 郁水 「大学生のマウンティング行為が受け手に与える影響」

 酒井恵子「自己高揚的呈示の否定的側面に対する反応の個人差」

 

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【記事監修者】塾長 柳生 好春


1951年5月16日生まれ。石川県羽咋郡旧志雄町(現宝達志水町)出身。中央大学法学部法律学科卒業。 1986年、地元石川県で進学塾「東大セミナー」を設立。以来、37年間学習塾の運営に携わる。現在金沢市、野々市市、白山市に「東大セミナー」「東進衛星予備校」「進研ゼミ個別指導教室」を展開。 学習塾の運営を通じて自ら課題を発見し、自ら学ぶ「自修自得」の精神を持つ人材育成を行い、社会に貢献することを理念とする。

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