大学の哲学科ってどんなところ?「哲学を学んで何になるの?」に答える - 石川県金沢市・野々市市・白山市の学習塾 - 東大セミナー
2022.03.03教育情報

大学の哲学科ってどんなところ?「哲学を学んで何になるの?」に答える


皆さんこんにちは。

石川県金沢市・野々市市・白山市の学習塾 東大セミナーの堀越です。

 

この現代社会において、「大学進学」というライフステージはある程度一般的になりつつあります。

2020年の調査では大学進学率が54.4%と過去最高を記録し、高校を卒業する学生のうち半数以上が大学へと進んでいく社会になっています。

 

では、いざ大学に進学するとしたとき、決めなければならないのが「何を専門に学ぶか」という点です。

5教科を満遍なく学ぶ「普通科」が大多数を占める高校とは異なり、大学はその専門性によって学部・学科が細かく枝分かれしており、大学生はその枝分かれした先の専門分野について、何年間もかけて学んでいくことになります。

しかし、中学生や高校生の段階で「この学部・学科ではどんなことを勉強するのか」ということを具体的にイメージすることは難しいかもしれません。

 

そこで今回の記事では、大学での専門的な学びとはどういうものなのかを専門分野ごとに紹介してみたいと思います。

今回は私が大学で専攻していた「哲学」について、それがどんなことをする学問なのか、どんな役に立つのかということについて、お伝えしていきます。

 

 

 

目次


1.「哲学」って何?

2.大学で学ぶ「哲学」について

3.「哲学を学んで何になるの?」

4.まとめ


 

 

 

1.「哲学」って何?


こういった学部学科の紹介記事において、最初に取り上げるのが「哲学」というのはどうも正道を外れるというか、奇を衒(てら)っているようにも見えてしまうかもしれません。

哲学自体は比較的多くの大学で学ぶことができますが、「哲学科」として個別の学科を持っている大学はごく僅かです。

高校生の中でも人気のある学問とは言えず、むしろ志望者の多い語学系や理工学系を取り上げるべきかもしれません。

しかし哲学について少し調べてみると、最初に紹介する学問分野としては実に適切のように思えてきます。

 

「人類最初の哲学者」とされるタレスという人物は、実に紀元前7世紀の人物です。

そこから今現在に至るまでの約2700年、哲学は発展を重ねてきました。

これはあらゆる学問体系の中で最も歴史があると言われることもあります。

 

最も歴史のある学問であるということは、最も長く議論が交わされている学問であるということを意味します。

「巨人の肩の上に立つ」なんて言葉もありますが、学問とは先人たちが積み重ねてきた実績を基にして、そこから一歩先に進むことで進歩を重ねるものです。

そういう意味では、言わば「最も研究の進んだ学問」とも言えるかもしれません。

最も歴史があり、最も研究が進んだ学問……。どうでしょうか、最初に紹介するのに相応しいと感じてもらえましたでしょうか?

 

では、そんな哲学は具体的にはどんなことを研究しているのでしょうか。Wikipediaの「哲学」のページを見てみましょう。

 

学問としての哲学で扱われる主題には、真理、本質、同一性、普遍性、数学的命題、論理、言語、知識、観念、行為、経験、世界、空間、時間、歴史、現象、人間一般、理性、存在、自由、因果性、世界の起源のような根源的な原因、正義、善、美、意識、精神、自我、他我、神、霊魂、色彩などがある。

(Wikipedia「哲学」)

 

……とあります。別に読まなくても構いません。

このラインナップを見ただけでは興味を持つどころか、余計縁遠いものに感じてしまうでしょう。なので、ここではよりシンプルに、簡単な言葉で紹介したいと思います。

 

簡単にまとめるなら、哲学とは「そもそも」を問う学問です。

そもそも『学問』って何だろう」「そもそも『自由』って何だろう」「そもそも人間とその他の動物って何が違うの?」など、世間の「当たり前」に対して疑問を差し挟むことが、哲学の根底にはあるのです。

 

大学の哲学科では、そんな根本的なテーマに加えて、物事の善悪を考える「倫理学」、芸術などの良し悪しを考える「美学」なども研究テーマとされることがあります。

 

どれもこれも、「それって何の役に立つの?」と言ってしまいたくなるものばかりですが、その問いかけはいったん置いておいて、ここでは哲学の紹介に留めます。

 

 

 

2.大学で学ぶ「哲学」について


大学で哲学を勉強するとして、まずこれまでの哲学の歩みを理解する必要があります。

いわゆる「思想史」「哲学史」と呼ばれるものです。

上で挙げた「そもそも『自由』って何だろう」という疑問は、実に古代ギリシャの時代から哲学の中に組み込まれています。

そこから何千年という時間をかけて、たくさんの「自由とはこういうことだ」という主張が生まれては、後世の哲学者によって批判され、より洗練されていきました。

その思想史を学び、かつ最新の哲学を研究する大学の教授から、様々な授業・講義を通じて哲学について学べるのが、大学で哲学を研究する大きなメリットと言えます。

当然、哲学は独学で学んでいくこともできますが、現代の無数に枝分かれした哲学を全て自分で学び取ることは非常に困難です。

大学には各分野の専門家と言える教授がたくさんいますので、より効率的に学ぶことができるでしょう。

 

また大学で学ぶ思想史は高校の社会科で取り扱う「倫理」と繋がる部分がありますから、大学で哲学を学んでみたいと思う人は高校で倫理を学んでおくといいでしょう(ただし、受験では倫理選択はやや不利な面があるので、注意して選択しましょう)。

 

 

大学の講義を通じて一通りの思想史・哲学の概論を学んだら、最終的に取り組まなければならないのが「卒業論文」です。大学4年間で学んだ集大成を、論文という形で世に残すわけです。

 

集大成とはいっても、相手とする哲学は三千年の歴史を持つ知の集合体です。4年間学んだ程度では、そこに大きく切り込むことは難しいでしょう。

なので、卒業論文を執筆する際はテーマ選択が重要になります。

大学の講義で学んだ様々な哲学のテーマから1つを選び取り、更に小テーマに区切って取り扱うくらいが、考えやすいのではないでしょうか。

(例として、私は哲学の「平等論」という大テーマから、「潜在能力論」という小テーマを区切って論文にしました。高校の倫理の教科書では3行くらいしか書かれていませんでしたが、それでも卒業論文にしたら15000文字を超えるほどの分量に膨らんだので思わず笑ってしまった記憶があります。)

 

卒業論文を書く際には、大学の講義で扱った内容だけではなく、自論を補強する哲学者の著作や論文を探して読んだり、時には同じ研究室の仲間と議論を戦わせたりしながら、論文の内容を深めていきます。

 

特に、大学の教授からのアドバイスは非常に参考になります。

相手はその専門分野のプロであり、更に論文を書くプロもあるので、主張を補強する参考文献を紹介してもらったり、より説得力のある論文の書き方を教えてもらえたりするでしょう。

ただし、自分が書きたい論文のテーマを専門とする教授がいるかどうかは正直分かりません。

もし大学選びの時点で自分の興味のある分野が定まっていれば、それを専門にする教授がいるかどうかの情報収集をして進路を決めるのも良いかと思います。

 

卒業論文の書き方は人それぞれですが、「これまでの哲学研究の一部に批判を加えて、自論を示す」「現在の社会問題などに対して、既存の哲学理論を適用して解決策を検討する」などが多いです。

やや難しい言い方になりましたが、つまりは「既にある哲学理論+自分なりのアレンジ」をもって、評価される論文を書くことができれば「大学卒業レベル」の哲学を身につけた、と言えるわけです。

 

 

 

3.「哲学を学んで何になるの?」


これまで哲学とはどういう研究をするのかについて話してきましたが、哲学科というとほぼ必ず聞かれるのがこの質問です。

しかしこの質問に答えるのが、なかなか難しいのです。

大学の学部生として4年学んだ程度の自分がこの難問に正しく答えられるかは分かりませんが、自分なりにこの問いかけに向き合おうと思います。

 

自分を含め、哲学を学ぶ人の多くは「何かに役立てよう」と考えながら哲学をしている訳ではありません。

哲学は「そもそも〇〇って何だろう」という自分のふとした疑問を解決するためにする、いわば知的好奇心を満たすためのものです。

そのため、「これが分かればこんなことに役に立つ!」と考えることは決して多くありません。

実際私は卒業論文のテーマとして「そもそも平等って何だろう?」ということを真剣に研究しましたが、卒業後の生活でそんな平等論が役立った経験は、今のところありません。

今後も果たして役立つ場面があるかどうか……。

 

ですから、大学で学んだ哲学自体が役に立つことは残念ながらほぼありません。

しかし、大学で哲学を学んだことで培われた「哲学的な思考法」は、今も非常に役に立っているなと感じます。

哲学的な思考法とは、最初にお伝えした通り、「そもそもを疑ってみる」という考え方です。常識として受け入れられている考えを疑い、何となく使っている言葉の定義を疑い、本質はどこにあるのかを見極める。

哲学を学ぶ中で繰り返しこなしてきたその考え方は、行き詰まっている現状を大きく変えるのには大いに役立ちます。

現代社会は科学技術の加速度的な発展によって、これまで常識だったことが次々と覆っていく時代です。

そんな社会の変化に追いついていき、更に今後の発展を引っ張っていく人材になるためには、この「哲学的思考」こそが大切なのかもしれません。

 

 

 

4.まとめ


ここまで、大学での専門分野の紹介として「哲学」を説明してきました。

ともすれば「変わり者たちの巣窟」のように見られがちな哲学ですが(そしてその印象はあながち間違っていなかったりもしますが)、「考えること」の面白さを最も感じられる学問だと思います。

そこで学んだ内容そのものが今後の人生に役立つことは多くはないかもしれません。

しかし身につけた「考え方」はいろいろな場面で役に立ってくれるはずです。

そんな哲学の魅力を少しでも感じてもらえれば嬉しいです。

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【記事監修者】塾長 柳生 好春


1951年5月16日生まれ。石川県羽咋郡旧志雄町(現宝達志水町)出身。中央大学法学部法律学科卒業。 1986年、地元石川県で進学塾「東大セミナー」を設立。以来、37年間学習塾の運営に携わる。現在金沢市、野々市市、白山市に「東大セミナー」「東進衛星予備校」「進研ゼミ個別指導教室」を展開。 学習塾の運営を通じて自ら課題を発見し、自ら学ぶ「自修自得」の精神を持つ人材育成を行い、社会に貢献することを理念とする。

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