一推し入試問題! ~2024年度東京大学文科大問2 解法丸暗記は許されない~ - 石川県金沢市・野々市市・白山市の学習塾 - 東大セミナー
2024.05.28一推し入試問題!

一推し入試問題! ~2024年度東京大学文科大問2 解法丸暗記は許されない~


皆さんこんにちは。東大セミナーの北川です。
今回は、先月の記事でも言及した東京大学文科の問題を解説して参ります。簡単そうな見た目に反して、実力差が出る問題になっております。最後までお付き合いいただけますと幸いです。

 


目次

1. 2024年度 東京大学文科 大問2

2.(1)を解く~基本に忠実に~

3.(2)を解く~ちゃんと意味を分かっていますか?~

4.まとめ

5. おまけ:\( 5^{27}<9×10^{18}\)を直接証明しよう!


 

 

 

1.問題の意味


 

今回の問題はこちら。

以下の問いに答えよ。必要ならば、\(0.3<log_{10}⁡2<0.31\)であることを用いてよい。
(1) \(5^n>10^{19}\)となる最小の自然数\(n\)を求めよ。
(2) \(5^m+4^m>10^{19}\)となる最小の自然数\(m\)を求めよ。

 

短い問題文ですね。問題の意味を理解するのもそれほど難しくありません。「\(0.3<log_10⁡2<0.31\)」については置いて、先を見てみましょう。


\(5^n\)は「\(5\)の\(n\)乗」と読み、素朴には「\(5\)を\(n\)回掛け合わせた数」を表す……というのは改めて説明するまでもないでしょう。\(5^2\)なら\(5×5=25\)、\(5^3\)なら\(5×5×5=125\)、\(5^4\)なら\(5×5×5×5=625\)というわけです。この、\(5\)の肩に乗っている\(n\)のことを「指数」というのですが、指数が\(1\)増えるだけで\(5^n\)は相当大きくなっていくのが分かると思います。

「指数関数的に増える」という言葉が、ものすごい速度で増えることを形容する表現として知られていることからも、その増え方がものすごいものであると感じられますね。

さて、それを踏まえて(1)の問題は「\(5\)を何回掛け合わせると、はじめて\(10^{19}\)を超えますか?」と読み替えることができます。\(10^{19}\)は日本語表記すると\(1000\)京です。万の上の単位が億、億の上が兆、その兆の上が京です。もはや想像がつかない大きさですね。

そして(2)も同じように、「\(5\)を何回か掛け合わせた数と、\(4\)をそれと同じ回数だけ掛け合わせた数を足すと、はじめて\(10^{19}\)を超えるのはいつですか?」と読み替えることができますね。後ろに\(4^m\)がくっついただけで、見た目的には(1)と大きく変わらないように見えます。

問題の説明は以上です。解くだけなら、例えば(1)についてはひたすら\(5\)を掛け合わせ続けて\(1000\)京を超えるまで計算を頑張るだけで(理論上は)解けるわけですね。実際、YouTubeにもそうやって解いているギャグ動画が上がっています。

とはいえ当然ですが、そうやって解くのが想定解法ではありません(多分)。この記事では正攻法でこの問題を解く時のポイントと、仕込まれた罠を解説していきます。

 

注意:この記事の以下の部分を数式の内容も含めて理解する場合、予備知識として高校数学IIの「指数・対数関数」の知識を要します。また、ある数とある数の大小関係を比較することを「評価」と呼称している部分があります。それをご了承の上、お進みください。

 

 

 

2.(1)を解く~基本に忠実に~


 

では早速、(1)を解いていきましょう。

といっても、これは市販の問題集に載っている問題と何も変わりません。\(5^n>10^{19}\)という指数の形では計算するのが大変ですから、これを見たらまず対数をとりたくなりますね(受験生でそうならない人は勉強不足です)。

実際に両辺の常用対数をとりましょう。すると、
$$n log_{10}⁡5>19$$
より、
$$n>\frac{19}{log_{10}⁡5}$$

という式を得ます。\(log_{10}⁡5=1-log_{10}⁡2\)である[1]ことを考慮すると、\( 0.3<log_{10}⁡2<0.31\)より[2]

$$1-0.31<1-log_{10}⁡2<1-0.3$$

ですから、

$$0.69<log_{10}⁡5<0.7$$

を得ます。これを使えば、\(\frac{19}{log_{10}⁡5}\) の値を評価できそうです。以下の通りです。

$$\frac{19}{0.7}<\frac{19}{log_{10}⁡5} <\frac{19}{0.69}$$

最左辺と最右辺を計算しましょう。

$$27.142857…<\frac{19}{log_{10}⁡5} <27.536231…$$

この結果から、\(\frac{19}{log_{10}⁡5}\) は「だいたい\(27\)くらい」であることが分かりましたね。

これを基にして\(n>\frac{19}{log_{10}⁡5}\) を満たす最小の\(n\)を求めてみましょう。右辺がだいたい\(27\)くらいでしたから、\(n=27\)でしょうか?いや、右辺は\(27.142857…\)より大きいはずですから、\(n=27\)では微妙に足りていません。

ということで、それよりも\(1\)だけ大きい\(n=28\)が条件を満たす最小の値であり、したがって(1)の答えは\(n=28\)になります。

もったいぶって解説しましたが、先ほども申し上げた通り、これは参考書レベルの問題です。東大を受ける人なら問題にならないレベルでしょうし、その他難関大を受ける生徒にとっても、きっと屁でもない問題だと思います。

では、いよいよ(2)の解説に参りたいと思います。

 

 

 

[1] 重要な式ですが、今回は解説しません。受験生で気になる人は青チャートなどを参照してください。

[2] (どうでもいいことですが)こんなに緩い評価値を与える常用対数の問題を初めて見たような気がします(\(10^3<2^{10}と2^{13}<10^4\)からすぐに\(0.3<log_{10}⁡2<0.3076…\)という、より厳しい評価値が得られますね……)。あまりの大雑把さに面食らった方も多いのでは?

 

 

 

3.(2)を解く~ちゃんと意味を分かっていますか?~


 

(2)は\(5^m+4^m>10^{19}\)となる最小の自然数\(m\)を求める問題でした。

先ほどの問題と見た目は大きく変わりませんし、同じように両辺の常用対数をとろうとした方も多いと思います。

とりあえず対数をとってみましょうか。

$$log_{10}⁡(5^m+4^m )>19$$

さて、ここで困ったことが起きました。左辺の\(5^m+4^m\)をどうにかする手段が無いのです。対数同士の足し算なら真数の掛け算に持って行けば済む話ですが、真数の足し算は掛け算でどうにかするのは難しいです。

とすると、\(5^m+4^m\)の大きさを何とかして評価する方向に行くしかないのですが、ここで通り一辺倒の丸暗記しかしていない人だと「\(log\)の足し算の大きさとかどうやって考えたらいいんだ?」となること請け合いでしょう。

要するに、この問題に張り巡らされた罠とは「意味も考えず式の丸暗記や変形だけで問題を解こうとするとドツボにはまる」というその一点に尽きるのです。

実際、式変形を幾ら試行錯誤したところで、それらが実を結ぶことは(この問題に限って言えば)ありえません。もっと、指数に関する本質的な直観が重要になります。

つまりはこういうことです。\(5^m\)と\(4^m\)、どちらの方がどれくらい大きいのか、それを考えてみればよいのです。

勿論、どちらの方が大きいのかと言われれば、それは\(5^m\)です(\(m\)が自然数なので)。では、\(5^m\)は\(4^m\)に比べて「どのくらい」大きいのか。考えてみると、

$$
\begin{align}
&5^m\\
={}&(1+4)^m\\
={}&1+4\binom{m}{1}+4^2\binom{m}{2}+⋯\\
&+4^{m-1} \binom{m}{m-1}+4^m
&\end{align}
$$

 

ですから、かなり大雑把に考えたとしても\(5^m\)は\(4^m\)より\(4^{m-1}\)以上も大きな数になるわけです。\(m\)が大きくなればなるほど、\(5^m\)は\(4^m\)よりも圧倒的に大きくなるような気がします。

とすると、\(m\)が十分に大きい時、\(4^m\)は\(5^m\)と比べて無視できるくらい小さいと言えるのではないでしょうか。ここまで予想ができれば、あとはそれを検証するだけです。

\(5^m+4^m>10^{19}\)が\(m=28\)のときに正しいことは、(1)からすぐに分かります。

では、\(5^m+4^m>10^{19}\)が\(m=27\)のときに正しいかどうかを考えてみましょう。\(5^{27}\)に比べて「圧倒的に小さい」\(4^{27}\)を足したところで\(10^{19}\)を超えないのではないか、と今私たちは直観からそう考えています。後はこれを、数式を使って正当化するだけです。

具体的な数を計算するのは大変ですが、ある数が「何桁の数であるか」を考えることは、対数を使うと簡単に分かる場合があります。

まず、\(10^{19}\)は20桁の数です。これは\(10^1=10\)が2桁の数、\(10^2=100\)が3桁の数、……と続けていくことで感覚的にも分かるでしょう。

先ほどの通り、今から\(m=27\)のときを考えます。\(5^{27}\)が何桁の数であるかを評価していきましょう。\(log_{10}⁡5^{27}=27 log_{10}⁡5\)は、(1)で使用した近似から\(27×0.69<27 log_{10} ⁡5<27×0.7\)と評価できるので、以下の不等式を得ます。

 

$$18.63<27 log_{10}⁡ 5<18.9$$

 

つまるところ、

\(10^{18}<10^{18.63}<5^{27}<10^{18.9}<10^{19}\)が分かるので、\(5^{27}\)は19桁の数です。

\(4^{27}\)も同様に評価しましょう。

\(0.3<log_{10}⁡ 2<0.31\)ですから、

\(0.6<2log_{10} ⁡2<0.62\)より、

\(0.6<log_{10} ⁡4<0.62\)であることに注意すると、以下のようになります(結果だけ書きます)。

 

$$16.2<27 log_{10} ⁡4<16.74$$

 

つまり、

\( 10^16<10^{16.2}<4^{27}<10^{16.74}<10^{17}\)が分かるので、\(4^{27}\)は17桁の数であることが分かります。

では、19桁の\(5^{27}\)と17桁の\(4^{27}\)を足して、20桁になる(あるいはそれよりも大きな桁数になる)ことはあるでしょうか。

桁数が大きすぎてちょっと想像がつきにくいですが、もう少し分かりやすい例で考えてみましょう。たとえば、3桁の数と1桁の数を足して4桁を超えることがあるか考えてみてください。

……どうでしょうか? 「考えている数による」というのが答えです。

例えば\(100+3\)は3桁のままですが、\(999+3\)は4桁になります。つまり、一番高い位にある数字が9だった場合は、小さな桁の数を足しても桁が繰り上がることがあるというわけですね。

ここでようやく最後のステップです。\(5^{27}\)の最高位の数が8以下であることを証明できれば、繰り上がりが発生しないことが言えます。そうなれば、\(5^{27}+4^{27}\)が20桁にならないことも証明できたことになります。

ある数の最高位の数を求めるのにも、対数が役に立ちます。最高位の数が9であるような最小の自然数は\(9×10^{18}\)です。これの常用対数をとって計算すると……と行きたいのですが、このままいくと\(log_{10}⁡3\)が出てきてしまいますので計算が煩雑化します[3]。考えてみれば、最高位が8以下であることを証明するだけで良いのですから、もう少し条件を狭めて、最高位が7以下であることを証明してみましょう。そうして計算しやすい値を持ってくればいいですね。

というわけで、\(8×10^{18}\)を評価してみましょう。

常用対数をとると

\(log_{10}⁡(8×10^{18})=3 log_{10}⁡2+18\)で、

\(log_{10}⁡2\)の評価値を使うと\(18.9<log_{10}⁡(8×10^{18})<18.93\)を得ます。

非常に都合の良いことに、

\(log_{10}⁡ 5^{27}<18.9\)を先ほどの評価で得ているので、ここから\(log_{10}5^{27} <log_{10}⁡(8×10^{18})\)が分かり、\(5^{27}<8×10^{18}\)が言えます。

これによって、\(5^{27}\)の最高位の数は7以下であることが言えたので、17桁の\(4^{27}\)を足したとて繰り上がりが発生しないことが保証されました!

つまり、\(5^m+4^m>10^{19}\)が\(m=27\)のときに正しくないことが証明されたので、当然それより小さな\(m\)についてもこれは正しくなく、よって初めて正しくなる\(m=28\)がこの問題の答えになることが分かりました!

(2)の答えも\(m=28\)だったわけですね!

一見複雑に見える(2)ですが、ちゃんと対数の大きさに関する本質を見抜くことができれば、あとは教科書に載っているような方法で簡単に解くことができます。

最高位の数を比較するのも、桁数を比較するのも、全部基本問題の範疇です。唯一発展的だった「対数の大きさに関する直観」だけが、この問題の成否を分けたと言えるでしょう。

日ごろから「そもそもどういうことだろう」を考えて、本当の意味で高校数学の諸概念を武器にできなければ東大の問題には届かない。それを端的に教えてくれる良い問題だったと言えるのではないでしょうか。

 

[3] 頑張ればこれを直接証明することも一応はできます(おまけで詳しく解説します)。

 

 

 

4.まとめ


 

今回は東京大学文科の問題を解説していきました。

終わってみれば(東大の問題としては)簡単な問題なのですが、正しい勉強を積み重ねたかどうかで解けるか否かに差が出るという意味で、恐らく合否を分けうるくらい大事な問題になったのではないかと思います。

数学に暗記は必要ですが、最後まで意味を理解せず、丸暗記だけに頼って問題が解けたと錯覚し続けるのもまた地獄への入口です。暗記と理解の両輪で、しっかり前に進んでいきましょう。

今月はここまで(といってもおまけがありますが……)。来月もお楽しみに!

 

 

 

5.おまけ: \(5^{27}<9×10^{18}\)を直接証明しよう!


 

さて、ここでは「計算が煩雑になる」として一度放棄した、\(9×10^{18}\)の大きさを評価する方針でこの問題の最後の部分を解いてみることにします。完全に蛇足以外の何物でもないので、興味のない方は無理に読み進めないのもよいと思います。

では、始めていきましょう。

\(log_{10}⁡(9×10^{18})=2log_{10}⁡3+18\)ですから、この値を評価するには当然\(log_{10}⁡3\)の値をどうにかして知らないといけません。具体的には\(log_{10}⁡5^{27}<18.9\)という評価が既にあるため、

$$log_{10}⁡5^{27}<18.9<log_{10}(9×10^{18})\\
=2log_{10}⁡3+18
$$

が成り立つことを示せばよさそうですね。

つまりは、\(18.9<2log_{10}⁡3+18\)を示せばよく、要は\(0.45<log_{10}⁡3\)が分かればよいです。

といっても、この問題\(log_{10}⁡3\)の値はこの問題では与えられていません(\(log_{10}⁡3≒0.4776\)であることを知識として持っていても、それを導く過程や、より正確な大小関係が欲しいですね)。ですが、この問題をあえて大変な方法で解こうと思うような訓練された変人なら、\(log_{10}⁡3\)の値を自力で評価するのはさほど難しくないでしょう。

一番シンプルなのは\(3^n<10^m\)を満たすような良い感じの自然数\(n,m\)を探してくる方法でしょう。上手い値を探すと、\(n=10,m=5\)のとき\(3^{10}<10^5\)になることが分かり、常用対数をとって色々やると\(0.454<log_{10}⁡3\)が分かりますのでこれで証明終了です。

\(3^{10}\)程度なら大した計算量も必要なく、1から順に試してもすぐに辿り着きますから、試験時間内にこの解答に辿り着くのもそんなに難しくはないでしょう。

或いは、元々与えられている\(log_{10}⁡2\)の評価を使ってみるのはどうでしょうか?

 

たとえば、\(2.5<3\)は明らかなので

\(log_{10}⁡2.5<log_{10}⁡3\)ですから、

\(2log_{10}⁡ 5-1<log_{10}⁡3\)が分かり、

\(log_{10} 5\)の評価から、

\(0.38<2log_{10}⁡ 5-1 <log_{10}⁡3\)が分かります。

 

これではちょっと精度が悪いですね。何か良い感じの精度の数値を探してみましょう。

\(log_{10}⁡3\)側から考えてみると、例えば\(80<81\)なので、両辺の常用対数をとっていい感じに整理すると、\(3log_{10} ⁡2+1< 4log_{10}⁡3\)を得ます。

 

ここで左辺に問題文で与えられている評価を使うと、\(1.9< 4log_{10}⁡3\)を得ますね。

つまり、\(\frac{1.9}{4}<log_{10}⁡3\)なので、左辺を小数で表すと、\(0.475<log_{10}⁡3\)を得られました!

 

いやー、思ったより簡単でしたね。入試本番もこっちの方法で解いた人がいるのではないでしょうか。

皆さんもたまには、問題文から評価を与えてもらうだけでなく、自分から評価をしに行くくらいの覚悟で問題に望んでみてはいかがでしょうか(?)。

 

 

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【記事監修者】塾長 柳生 好春


1951年5月16日生まれ。石川県羽咋郡旧志雄町(現宝達志水町)出身。中央大学法学部法律学科卒業。 1986年、地元石川県で進学塾「東大セミナー」を設立。以来、37年間学習塾の運営に携わる。現在金沢市、野々市市、白山市に「東大セミナー」「東進衛星予備校」「進研ゼミ個別指導教室」を展開。 学習塾の運営を通じて自ら課題を発見し、自ら学ぶ「自修自得」の精神を持つ人材育成を行い、社会に貢献することを理念とする。

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